もやしもん 3巻

漫画の話を。ええと今更っぽいけど好きなので。

もやしもん(3) (イブニングKC)

もやしもん(3) (イブニングKC)

某農大を舞台にした、発酵物に関するウンチク漫画。というだけだと何かが足りない。一話完結型の紹介漫画なわけではありませんが、おまけっぽいウンチクが枠外にびっしりあって、本編のお話ともどもそれも楽しい、文字通りごった煮漫画。大好き。


主人公が『菌が見える』というのがあって、菌って何だよ!というツッコミが発生するわけですが、作中では細菌もウイルスも全部含まれていてええと微生物全般が目に見えると言えば、未読の方にも伝わりやすいのかしら。そしてここは漫画らしいファンタジーが働いて見えてる菌は全般的にデフォルメていうかそういうレベルでなく線と点だけで作られたなんとも愛らしい造型をしておりましてキャラが濃い。どういうことかと言うと、「いやー乳酸菌カッコ良すぎて惚れたぜ!」とか、「沢木(主人公)んちのA・オリゼー*1ー、沢木のこと好きすぎて照れるね!」とかそういう使い方が可能な感じ。菌の口癖はかもすぞ。人間の本編以外に菌の会話だけで一話二話作られたりして、ほんとに何でもあり。


読む度に思うことには菌(と呼びたくなるんです、読むと)による発酵物っていっぱいあるんだなあということ。酒・味噌・醤油・当然だけれど納豆も、それからチーズにカルピスも?2006年版のこの漫画を読め!で、「私たちの視界を広げてくれた石川雅之に花束を」(ウロ覚え…)みたいな感想があって、まさに、と思いました。うまいことを言う…。その昔、そういった微生物、の概念がまったくなかった頃には、食べ物がくさったり、カビたりする現象がなにゆえ起きるものであるのかさっぱり謎で、全て何もないところから起きるように言われていた時代があるそうですが(そりゃそうか)、そうではなくってある種の生き物の力によるものであるということを、一気に身近に感じられる漫画でございます。楽しい。


3巻も出て本編紹介も無いもんですがちょっと書いてみたかったのでツラツラと。なんかまだ足りてない気がします。まあいいか。以下3巻感想。


表紙見てもわかんなかったよ!相変わらず何の漫画かわからぬ表紙を地で行っていて楽しうございます。今回出てきた発酵物は、納豆にワインに泡盛に日本酒の長期熟成に、伝説の、世界で一番臭い食べ物シュールストレミング「ニシンの缶詰」。シュールは作者が召し上がったのでめでたく漫画のネタになったとのことですが、サイトの日記で感想拝見するだけでも絶対食べたくないなあ、臭い嗅ぎたくないなあという思いが募りました。本編読んでもそう思いました。みんなでわきあいあい(?)やってるのは楽しそうですが、うん、食べ物かどうか疑わしい食べ物は極力食べたくはない…


発酵物ネタ以外にも、少しずつ人間関係も変化があって楽しい。てゆかハセガワさんがもえキャラだよなあと思うわけで。長谷川さんと沢木が揃って参加したコンパが大失敗したエピソードがたいへん好きです。二人のコミュニケーション下手に対する、亜矢さんと樹先生の感想が楽しい。頼もしい。こういう真っ当な感じがまざるのがありがたい感じ。亜矢さんは、樹先生の酒の持ち込みを丁寧な言葉できっちりお断りなさっているところが格好よいです。素敵!


その他、味噌汁作りの手順を指示するオリゼーが可愛いです。てゆか教えてくれてるのに「そうなの?細けェな……」とか言いつつ従っちゃう沢木もかわいい。揃ってかわいい反発するわけでもなく、過剰に仲良くするのでなく、日常として菌と会話している様が一種シュールで淡々としていて楽しい。ペットでも飼おうかと、とか口にしたら部屋中に蔓延するオリゼーに声揃えて「なんでじゃ」と突っ込まれる沢木とかってこれどういう種類の楽しさかな。ポケモン的なパートナーちっくな楽しさかな…うまいこと言えません。今回びっくりしたのはかつおぶしも発酵物、という欄外注。そうかカビを使うものなのか…昔のひとは一体どんなきっかけでこいう食べ物を作り上げてきたんだろうと、不思議がつのります。


一冊読むと、何か食べたくなる漫画です。一緒に「リトル・フォレスト」(五十嵐大介ISBN:406337551Xとか読むとより一層身近になって、さらに腹が減ります(どうなんだ)。

あー楽しかった。

*1:酒とか味噌とか作るのに使うコウジカビの一種。だそうで。作中多分一番出てるかしら。